認知の歪み ~ 自動思考の落とし穴 ~

 人は事象という刺激を「認知」というプロセスを経て認識する。認知してはじめて,事象があったことを認識するのだ。 事象(事実) …> 認知プロセス …> 認識される 

 事象には,取るに足らないものから,生命の危機に直結するものまであり,雑
多で大量に生じている。そのため,我々は認知のプロセスを自動化させている。
いちいち考えていては,たいへんだからだ。 

 しかし,常に正しく認知できているかと言えば,それはNoである。これまで
の体験や環境により,人々の認知は様々に歪んでいる。

  事象A発生 …> 認知 …> 危険として認識 … 人によって捉え方が変わる。
 …> 安全として認識
 …> 無視して認識されない 

 この自動思考の落とし穴ともいえる認知の歪みのせいで,誤った判断をすることもあるし,人から傷つけられることもある。
 歪んだ認知が元で,人から否定されたり,非難されることは辛いことだ。 

 人が行っている認知という処理は,事象を正しく認識していない…歪むという
ことをあらかじめ理解しておくことで,生きるうえでストレスが軽減することも多い。
 いつも正しく認知されていると考えるのではなく,認知は歪んでいることを前提に,生きることで心穏やかに暮らせる部分もある。 

 他方,自分の歪んだ認知により,誤った判断をしてしまったり,人を傷つけて
しまうこともあるだろう。そのようなことがないよう,常に認知を補正する意識
を持ちたいものである。 

 さらに,補正という考え方をもう一歩進めて,自分の認知プロセスを操作・訓
練することで,より良い精神状態になることも可能である。これをケアに応用したものが認知行動療法である。認知行動療法については,機会を改めて紹介したい。 

 今日は,代表的な認知のゆがみを簡単に紹介する。参考にしてほしい。
 憲法9条や,原子力,差別,いじめ等をイメージして考えるとわかりやすいだろう。
 あなたに,認知の歪みはないか,確認してほしい。

1.恣意的推論
 意図的に,自分に都合の良いように推測して結論を出す。
 予測や占い,可能性の話をあたかも事実のように考える。
 相手の気持ちを弱い根拠を基に,勝手に推論し,決めつける。
 (客観的事実に基づかない。論理に破綻や飛躍がある)

2.二分割指向
 白か黒,0か1,正義か悪など,二極化させて考える。
 (グレーゾーンの存在や,程度の問題であることを理解しない)

3.拡大解釈 < > 過小評価
 関心のあること,意図したことなどを大きく捉える。
 (中立的に物事をとらえない)

4.極端な一般化
 まれな事象でも,恒常的であると決めつける。
 (小さな事実を拡大解釈して,みんながそうだなどという)

5.自己関連づけ
 事象を自分と関連づける。自分が◯◯したから,こうなったと考える。
 (因果関係が無い,もしくは因果関係が希薄な事象でも自分との関連を強く
 考える)

6.選択的抽出
 自分の関心のある事柄などを恣意的に抽出して,結論づける。
 (正しい統計結果を反映していない。マスコミの情報にはこれが多い)

7.情緒的理由付け
 その時の感情と事象を結びつけて結論づける。
 (感情とは関係無い事象も,自分の感情と結びつける)
 例;気分が沈んでいるから,天気が悪い。

8.完璧主義・潔癖思考
 間違いを許さない。完全な清潔を求める。
 (聖職者たるや,完璧な人格者でなければならない。学校の先生は聖職だか
 ら同様だ)

9.レッテル貼り
 レッテル貼りや,キャッチコピーで印象操作をする。
 (悪いレッテル貼りは,国会答弁やいじめ等で多用される)

10.すべき・あるべき論
 こうすべき,こうあるべきと,行動を制限させてしまう。
 (男は強くあるべき。警察や議員は,潔癖であるべき) 

 人間というものは,愚かなりと古来,哲学でも言われているが,
この認知の歪みからくる盲目的でネガティブなビリーフ(信念)が人の生活の上で支障をきたし,愚かな行為を巻き起こす。
 今一度自己考察し,健全健康なビリーフを持ち続けよう。

以 上

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